BOOGIE ALL NIGHT LONG
珍道中


寿司、日本酒、ラム、ジン、テキーラ、ウォッカ、ちょっとのティオペペ、もうすぐ二十四時。
新宿駅の東口連絡通路を歩いていると次の瞬間、東中野駅前にいた。








   東中野は大江戸線がある。   大江
戸線         に乗ると江古田に行ける。    愛しの江古田
我が心の江古田!我が              人生最愛の地江古田!そして今の嘘!
              !信じるもの
ほど救われなー い、マルシー電気ー
     横にいるこの人だれ










ギターケースを持った、見知らぬ男と、一緒に歩いている。
次の瞬間、熱いものを触って手が引っ込む反射のように大久保駅での記憶がよみがえってくる。

モヤモヤモヤ〜ン(回想SE)










   あー    ったく    何を考えて                      おいどうしたいんだ いやもうきめた いまきめた 
いるんだね  まったく  南部のには奇妙な果がなるそうだ
   しらねえしらねえしらねえ    何を 考えて いるんだ  
ここはどこだ   お   和風ヘルス寺子屋   ということは   
そうか!大久保だ!     おじさんとおばさんがブティックホテル  
吸い込まれ
 いや    ………                 とりこまれていく  
    たーそーがーれーりゅーせーぐーん
聖闘士聖矢の技みてえ               のぶ代……っ!のぶ代……っ!
  ぶつ ぶつかる    あ大丈夫大丈夫です    きめたきめたきめたおれはきめたぞジョジョォォォォォ
  しずんでゆくのも   へいわにうかんでるのも(スイマーよ!より抜粋) 
                                         あ 公園だ休もう







モヤモヤモヤ〜ン(回想終了)

あれ。なんでだろう。この人誰。『あ、じゃあ家近いんじゃん』
ため口の記憶があるぞ。そうだ。でもそれで?うーん。

「あ、俺ちょっとコンビニ行ってくるわ」

言うなり近くのampmに駆け込んでいく謎の男。
長髪、金髪、百八十はありそうな身長、がりがり、
ギブソンのハードケース。

        ギター?
            GUITAR?        Gibson?

D Fm なんかしらんコード Fm

  俺なんか歌ってなかったか          気のせいだ気のせいだ
         おいおいおいおいおい
          どうした          どうした 
                         もどれひたるなひとやまいくら
あえてとかが面白いのは有名な人だけだ
           え     誰あの人



おぼろげながら記憶をたどってみても、確たるものは得られない。
そんなことを考えていると男が戻ってきた。トリスの小瓶を差し出してニヤニヤしながら言う。



「はいこれヤマさんの」























WHO THE FUCKIN' HELL MR.YAMA?
ヤマさんて誰?訳:戸田恵子







                                      俺?













受け取ったトリスの小瓶。ねじ切って一気に飲む。不思議と吐き気もない。
また歩き出す。飲み込んだトリスの感覚以外、何もかもが曖昧。
沈黙、沈黙、沈黙。中野駅に到着したところでようやく謎の男が口を開く。


「ヤマさん、何歳?」
「今年で二十七」よし、身元は隠すぞ
「じゃあ二つ上だ」
「二十五か、今何してんの」
「プー太郎」
「へー」
「ヤマさんは?」
「印刷工場」
「へー、あ、食べる?」

さきいか。むしりとるようにして喰う。

「俺さあ、最近金なくてさあ」
「家どこなんだっけ?」
「いやだから阿佐ヶ谷南だって、酔ってる?」
「酔ってるよ」

言葉少なに歩き続ける、高円寺につくにはあと数分。

「この道で良いの?」
「目ぇつぶってたってつくよ」いやつかないけどたとえね、たとえ
ええと、おそらく大久保の百二公園でこの人に会って、
それで家が近くて一緒に帰ることにした、と、多分それはあってる。
で、この人は俺をヤマさんって呼んでるわけだけど、無論俺はヤマさんではないし、
今までヤマさんを名乗ったこともない。なんでだろう。
ぱっと見、別にやばそうな奴じゃない。多分、まっとうに暮らしてきて
まっとうに大学生活でだだけて面倒くさいから就職しなかった類の人だ。
おそらくこのギターケースの中のギターで、俺は一曲歌ってる。
いや、待てよ、じゃあ、この人弾き語ってたのか? 大久保で? あの公園で?
そんな馬鹿な。すぐ死ぬぞ。裏のマンションヤー公と外人と悪外人しかいねえし。

高円寺駅到着。ガード下。
「あ、ホントだ、高円寺じゃん」
「な」
「お、やっぱいるね、ストリート」その呼び方は何故。
「ここらへん多いからな、下手くそで才能もねえ、悲しい」
「ヤマさん飲んでる?」
「飲んでるよ」
ぐびり。見ればもう半分になっている。いつもの泥酔して寝潰れる分。


















おい、ミスター、俺、酔ってるか?












































           






































ファックの叫びとともにシャッターを延々と蹴り続けていると、やはり来るポリス。
友達の葬式の帰り道だとうそぶいて同情される。水ももらう。ポリスの名前は確か水木。
周りを見渡してみると、謎の男は姿形もなくなっている。










ああそうか、そりゃそうだ。









トリスのもう半分を飲み干すと、家にいた。
覚えのない日記。覚えのない電話。覚えのない腹痛。
メールが来ていたので、返して、寝た。





制作
2006/06/29

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